一般的に真空環境にする理由は
1.ワークに被膜をつける為、不純物の付着を避ける目的
2.高温加熱での酸化を保護、もしくは高温時の熱伝導を抑える目的
世の中の真空装置のほとんどが、この二つだと思う。(吸引用途は別として) 身近なところでは電球! 中のフィラメントを酸化させない為、疑似真空として不活性ガスをパージしている
さて、真空装置の部品を製作する際に重要なこととは何かというと
①.高温から大気に変化した際 熱膨張が少なく酸化しにくい材質
(代表的な素材SUS304・316)
②.摺動部には、粉塵や摩擦が発生しにくい材質
③.絶縁性が高く汚染しにくい材質
(樹脂ではテフロン 樹脂以外ではアルミナが多い)
他にも①には軽いアルミニウムや超耐熱のインコネルやハステロイも使われたり摺動部にSUSの研磨品、樹脂ではジュラコンやべスペル・PEEK等も目的に応じて使用される 熱源は様々な論理が あるのでここでは省略
多くの真空装置は表面はSUS 熱源廻りはセラミック 覗き窓は石英ガラス が多いと思う。
ここでモノづくりにおいて重要なのは「真空で使う部品」の常識である
①バリやエッジはNG
電気が流れる場合はエッジやバリにスパークする可能性がある、またバリが不純物になる事もある為、糸面取りは必須であるし糸面の返りすら嫌われる世界
②表面仕上げ
部材の表面が荒れていれば、表面の凹凸が汚染されやすい原因になるし、汚れの付着も付きやすい!図面に仕上げ面記号が書かれていなかったとしても、真空内で使用する事を知っているなら最低6.3S(▽▽▽程度)で仕上げる事を推奨する(蒸着装置で被膜を固着させない為に、ブラストで表面を荒らす場合もある)
③洗浄
汚れは当然NG 酸化膜も当然NG なぜこの部材を選定されているか、考えれば当然の事。特に切削油等の油分付着は、真空内で大きな汚染になる。 目に見えない物でも汚染になるので、素手で触る事は論外である
④クラック
目に見えないクラックでも、熱膨張すれば破損する。特に熱源廻りは高額な部品が多い為、部品破損による被害は大問題になり余裕で信用を失う原因になる
⑤表面処理
真空内の表面処理で多いのは「電解研磨」もしくは「ブラスト処理」である ブラスト(ホーニングブラスト)処理は、使用後の洗浄に使用する事が多く 新規製作の場合でSUSが選定された時は「電解研磨」の有無の確認は常識
こんな話をすれば、え~真空部品って面倒だなあ っていう職人は多いです。 しかし真空環境じゃなくても、バリやエッジで怪我する事はダメですし、新品で買うんだから、綺麗な商品が欲しいユーザーも多いです。 逆に言えば真空スペックが標準になれば、日本の物づくりは世界で頂点とれるのではないでしょうか
きれいで安全な商品をお客様に届ける事こそ日本の美学だと思うんです